校長室より

「まずは、強い思いから」(第2学期始業式式辞)

2学期の始業式をむかえました。夏休み期間中、大きな事故等の報告もなく、生徒の皆さんが元気な姿で始業式をむかえられたことを喜びたいと思います。例年より短い休みとなりましたが、心身のリフレッシュは出来たでしょうか。期間中、自宅生や寮に残った生徒を対象に企画した校外活動には多くの生徒が参加してくれました。帰省をした寮生も、コロナ禍にあり制限の掛かる中でしたが、家族との大切な時間を過ごせたことと思います。

1学期は制限の掛かる中ではありましたが、多くの皆さんが小学生を対象にしたボランティア活動や中学校を訪問しての学活の講師など様々な活動を通して、地元の小中学生と積極的に交流し、中学生のうちにやるべきことなどについて的確にアドバイスもしてくれました。そのような活動は、関わる側の君たちにとっても、自分を振り返るうえで貴重な経験になったはずです。

さて、2学期です。10日後には碧燎祭も予定されていますが、まずは、新型コロナウイルス感染症の感染防止に対する高い意識を持って今学期をスタートする必要があります。感染防止の基本となるマスク着用や3密を回避することなど、一人一人がやるべきことを確実に励行していきましょう。感染が拡がる中、既にいつどこで感染者が出てもおかしくない状況にありますが、今後身近なところで感染が発生した場合にも、学校からの指示を冷静に受け止め対応してください。君たちに敢えて言う必要はないことかもしれませんが、感染者を誹謗・中傷するような行為は厳に慎んでください。

2・3年生には昨年も紹介しましたが、次のことは、 稲森和夫という方の著書からの言葉です。2学期を向かえるにあたり、改めて紹介します。

「世の中のことは思うようにならない ―私たちは人生で起こってくるさまざまな出来事に対して、ついそんなふうに見限ってしまうことがあります。けれどもそれは、『思うとおりにならないのが人生だ』と考えているから、そのとおりの結果を呼びよせているだけのことで、その限りでは、思うようにならない人生も、実はその人が思ったとおりになっているといえます。人生はその人の考えた所産(作り出されるもの)であるというのは、多くの成功哲学の柱となっている考え方ですが、私もまた、自らの人生経験から、『心が呼ばないものが自分に近づいてくるはずがない』ということを信念として強く抱いています。つまり実現の射程内に呼び寄せられるのは自分の心が求めたものだけであり、まず思わなければ、かなうはずのこともかなわない。いいかえれば、その人の心の持ち方や求めるものが、そのままその人の人生を現実に形づくっていくのであり、したがって事をなそうと思ったら、まずこうありたい、こうあるべきだと思うこと。それもだれよりも強く、身が焦げるほどの熱意を持って、そうありたいと願望することが何より大切になってきます」。

 

なぜ君たちにこのことを伝えたいかと言えば、それは私自身が経験の中で実感したことでもあるからです。自分のことになりますが、少し話をさせてもらいます。私は、高校生の時に、教師になりたいという気持ちを持ちながらも、とてもはずかしくてそのことを周りの誰にも伝えるができないでいました。何をはずかしいと思っていたかと言えば、努力もせずに自分の希望だけ叶えたいなんて甘すぎると、自分自身が自分のことをよくわかっていたからです。3年生になっても、そのことを担任の先生にすら伝えることができない、そんな状態だったので、結局、一年間浪人することになるわけですが、今でもはっきりと憶えている、忘れられない光景があります。

それは、3月末に島を離れる時、フェリーで大勢の人たちに見送られている場面です。県外の予備校に通うために、一番仲の良かった友人が本土に向かう日に合わせて島を離れることにした私は、大勢の見送りの人たちの激励を受け、片手では持てないほどのテープを手にしている友人の隣にいました。フェリーのデッキで、テープを分けて持たせようとする友人から2・3本のテープを受け取り、でも気持ちは、見送ってもらう資格なんか自分にはないんだと思っていました。その時の惨めな気持ちを、いつまでも忘れることのできない光景とともに感情と記憶に留めています。後になって考えれば、その時に自分の気持ちが固まったとも思えます。絶対教師になるんだと、そして、帰ってこようと。その後の学生生活や社会人になってからは、気持ちが固まれば、運も味方してくれると実感できる機会に恵まれました。昨年から、母校である島前高校に勤めるようになり、今は、親しい友人が身近にいる環境の中で、自分の後輩にあたる生徒たちに囲まれ、やはりすべての始まりは、強い「思い」であることを実感しています。

冒頭でも触れましたが、1学期に実施された地元小中学生との交流の中で、中学校の後輩に向けて自分の夢をしっかりと語ってくれた人がいました。進路実現を目前に控えた3年生にとっては、いよいよ社会の扉を開く時が間近に迫っています。扉に届くまでの時間をしっかりと計画し、自分に嘘をつかない、そして粘り強く最後まで諦めない地道な努力を積み重ねてください。1・2年生にとってもこの2学期は、自分自身としっかりと向き合い他者と関わる中で、自分の可能性を大きく広げていける大切な時期です。自分の可能性を信じ、強い「思い」を持って、前へと進んでいきましょう。

最後にもう一度確認しておきます。新型コロナウイルス感染症の感染防止に対する高い意識と自覚ある行動、それがこの2学期当初は特に求められることを十分に理解し、実践してください。

以上、2学期始業式の式辞とします。

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