校長室より

「学校魅力化、新たなステージへ」(第2学期終業式式辞)

2学期の終業式を迎えました。生徒の皆さんはこの2学期をどのように振り返りますか。

9月4日・5日に行われた碧燎祭、あれからもう4か月が過ぎようとしています。でも、一つ一つの場面での君たちの笑顔は鮮明で、いつまでも頭から離れません。生徒会執行部を中心に全校でいつまでも記憶と思い出に残るいい学園祭を作り上げましたね。本気は伝播し、一つの大きなエネルギーになることを改めて実感することのできた今年の碧燎祭でした。2学期の様々な活動の中で特筆すべきは、英語の各種大会で上位入賞が続き、全国大会への出場権を二名が獲得したことです。そのうち、2年1組の林 七菜子さんは全国国際教育英語弁論大会で3位相当の国際協力機構理事長賞を獲得しました。また、1年2組の南川 文音さんは全国商業高校英語スピーチコンテストの県大会レシテーションの部で1位となり、1月の全国大会に出場します。この他にも10月に行われた島根県高校生ディベート大会では、先ほどの2人に加え1年1組の松野下 あかりさん、1年2組の中尾 彩奈さんのチームが2位に入賞しました。このような活躍は、当事者はもちろん学校の取り組みとして自信につながっていくものです。

11月8日から4泊で行われた2年生の研修旅行、今年は県内他地域での開催となりました。夢探究の中間発表は、内容もプレゼンも質の高さに感心しました。奥出雲の伝統・文化に触れ、松江・出雲の観光地を訪ねた想い出は、確実に高校生活の1ページに加わったことと思います。私も同行しましたが、研修旅行期間中、終始居心地の良さを感じていたのは、学校を離れた公共の場での集団生活であることを生徒一人一人が自覚していたからだと思います。

 

話は変わりますが、今日は本校の魅力化の取り組みに関連して、少しお話をさせてもらいます。2010年にスタートした隠岐島前高校魅力化プロジェクトも今年で12年目を迎えています。2008年には、生徒数の減少により全学年が一クラスになるという、まさに学校統廃合の危機に直面した状況を受けての魅力化の始まりでしたが、2014年には再び全学年の二クラス化を果たし、その後も県外から多くの島留学生を迎え入れることができ現在に至ります。本校から始まった教育魅力化の取り組みも、2019年からは対象を高校に限定せず地域全体へと広げ、地域全体で協働しこの地で学ぶ価値を高めていく取り組みに移行してきているところです。来年度、本校に新学科(「地域共創科」)が新設されることや島前地域で2年目を向かえる「大人の島留学」などの還流の動きは、この先5年後、10年後の本校やこの地域の未来を照らす希望の光になり得るものと受け止めています。

このように、本校の歴史の中でも大きな変革期と捉えることができるこの12年。その中で、ここ3年間、本校に関わらせてもらっている立場から感じていることの一端を今日は伝えます。島前高校の校長として、生徒を見る視点で常に意識に置いていることの一つに、「寛容であること」があります。「寛容とは、広い心を持ち、他を受け入れるさま。具体的には、自分とは異なる意見や価値観を安易に拒絶せず許容しようと努めたり、他人の失敗や失礼な振る舞いをことさらに咎めたてたりせず許そうとする姿勢。」とあります。本校の特色である多様性を踏まえた学習活動や友人関係から、まさに必要な資質であることは君たちが一番に理解していることでしょう。しかし、他者に寛容であることは、口で言うほど簡単なことではありません。先日、テレビをみていると、コメンテーターが次のように言っていました。「人は常に無自覚に不寛容である」と。それは、ある意味真実なんだろうと思います。寛容であるためには、常に、同じ人間同士でも物事の捉え方は千差万別であること、自分の正しさの限界や自分とは異なる正しさがあるかもしれない可能性に想像力を働かせることが必要になってきます。また、学校という集団生活の中で、あるいは、君たちが近い将来所属するであろう組織の中で、この寛容さを本当の意味で機能させるためには一人一人に求められることがあります。ここまで言えば君たちはもう気付いていることでしょう。それは、その集団を構成する一人一人の自律性と主体性です。他者から強制されて自分の行動を決めるのではなく、自分の考えによって行動を選択し、自らの行動がもたらす結果にも責任を負うことができる力です。君たちは自分の身をどちらに置きたいと思いますか、自律的・主体的で寛容な集団と他律的で不寛容な集団と。

本校に赴任して3年、今、本校は学校魅力化の新たなステージに立とうとしていることを実感します。特に、今年度、課題と捉えていたいくつかのことが前へ進み始めました。まずは授業です。10月の授業公開週間に2年ぶりに訪れた方は、「以前と比べて授業に臨む生徒の姿勢が意欲的であることに驚いた」と言っておられましたし、11月には島親の方にも授業の様子を見ていただきました。こういう君たちの態度に応えようと、教員の授業改善への取り組みも今年度に入りグンと加速しています。まさに好循環です。生徒会の活動も主体的で、それが前期の碧燎祭の成功につながり、後期の校内環境の整備活動等にも反映されています。部活動においても、男子バスケットボール同好会が発足し、夏には本土から多くの学校が練習試合に訪れました。また、他の部活動においても、大会が終わっても朝練習を欠かさない姿がテニスコートや格技場に見られます。今年度に入ってからは特に、学校全体に落ち着いた雰囲気が広がってきており、心配するような問題に類する行為は見られなくなりました。今後は、これを当たり前のレベルにし、そして、君たちの自律的で主体的な姿勢が定着してくれば、そこから新たな島前高校の伝統を築いていくことができると期待します。

さて、生徒の皆さんは、この冬休みの間に2学期の取り組みを必ず振り返ってみてください。自分が思うようにできたこと、あるいはできなかったこと、まずは自分自身で自覚できるように努め3学期に向かっていける前向きな気持ちを整えてください。3年生にとっては、自分の進路実現に真剣に向き合う日々が続いた2学期です。既に内定を得た人もいますが、1月の大学入学共通テストを目標にしている人もいます。最後まで粘り強く諦めない挑戦を学校全体でサポートし応援していきますので、体調管理に努めて頑張ってください。

最後に、新型コロナウイルス感染症への対応について確認をしておきます。全国的な感染状況は、ワクチン接種の効果もあってか比較的落ち着いているという見方もあります。しかし、感染力の強いとされる新たな変異株の確認やワクチン接種後の効果の有効期間等、まだ安心できる状況にはなく引き続き警戒が必要です。冬期休業中も基本的な感染防止対策を徹底し、体調管理に努めてください。特に、寮生は帰省先においても感染防止を念頭に置いた自覚ある行動を実践してください。

皆さんが充実した冬休みを過ごし、元気に3学期再会できることを期待して2学期終業式の式辞とします。

この記事をシェア