校長室より

「意志ある未来をつくる23の物語」(第3学期始業式式辞)

皆さん、おはようございます。3学期の始業式を迎えました。年末・年始、ゆっくりとくつろぐ時間が持てたでしょうか。

この間、新型コロナウイルス感染症は、感染力の強い変異株の影響で全国的に感染者が急増してきており、寮生の多い本校に置いては、強い警戒感を持って新学期をスタートする必要が生じています。

さて、この3学期は生徒一人一人にとって、また、学校にとっても今年度の総決算の時期です。終わりをしっかりと締めくくり、令和4年度につなげるために大切な時期であることを自覚して新学期、スタートを切りましょう。

まず、3年生。生徒数の少ない学年でしたが、その分、入学以来仲が良く、まとまりのある学年でした。今、それぞれが目指す進路に向けて一人一人の置かれている状況は異なり、いよいよ自立していく時期を迎えています。まだこれから進学試験を控えている人は、今できることに必死で取り組んでいることでしょうし、進路が内定している人も希望と共に少なからずの不安を抱えていることでしょう。でも、間違いなく言えることは、今、君たちは伸びる時期です。目の色を変えて必死になり、希望と共に今すぐには解決できない不安も抱えながらしっかりと自分と向き合うことで大きく成長できる時期です。高校生活は残り少なくなってきてはいますが、悔いなくいきましょう。1・2年生にとっては、1・2学期に他者と関わる中で視野を広げた経験を3学期はしっかりと振り返りながら自分自身と向き合い、自分の将来につなげていくことが求められる時期です。探究活動の「学びのサイクル」で言えば、最後の振り返りの過程をしっかりと行うことで次の活動、自分の行動につなげていってください。

2学期の終業式で本校の教育魅力化の取り組みについて触れましたが、今日もそのことに関連して紹介をしておきたいことがあります。本校がこの教育魅力化の取り組みを進めていく上で、その指針(向かうべき方向を示す大方針)にしているのが「隠岐島前高校魅力化構想」です。この構想も12年の時を経る中で、「第1期の魅力化構想」から2014年には「第2期の新魅力化構想」に、そして、2019年からは現在の「第3期魅力化構想(第3期魅力化ビジョン)」へと引き継がれてきました。学校としては、この第3期魅力化ビジョンで示されたことをいかに実現していけるか、それを重要課題として関係者が日々協議を重ねてきているところです。この魅力化ビジョンは3つの章から構成されていて、その第1章には「意志ある未来をつくる23の物語」が掲載されています。この「23の物語」の中には、既に実現できていると思えるものもいくつかありますが、まだまだ達成できていないこともあり、その実現に向けた動きを加速させるためにも、この内容を教職員のみならず在校生とも共有したいと考えていました。それがこの度実現できます。生徒会執行部の協力を得て、校舎の1階から3階、そして体育館の23箇所にポスターを掲示します。ポスターは物語の内容によって7色のフレームに収められますが、この7色は生徒の発案で、虹が出ると物事がよい方向に進むという意味と、本校の多様性に意味づけ、多様な生徒、大人、環境をイメージしたものです。来年度からは、次の第4期魅力化構想の作成が始まりますが、そこにつなげるためのヒントがこの「23の物語」の中に隠れていたりもするはずです。我々教職員と共に、君たちも時間や気持ちに余裕がある時にはぜひこの物語に触れ、友達同士で話題にし、その中で実現にむけた良いヒントなどがあれば教えてください。

本校に赴任し、教育魅力化の取り組みに関わるようになって一つ感じていることがあります。それはこの島前という地域、そして魅力化に関わる人たちに共通していることとして、簡単に「それはできない」と言わないプライドです。この姿勢には、これまで私も随分多くのことを学んできました。こんなこととてもできないと自分自身が思ってしまえば、人間その次にすることはできないことの言い訳探しばかりです。一方、一見ハードルは高く思えても、自分を信じて、また、周りの人たちを巻き込む覚悟を決め「よしやろう」と言えば、自分の気持ちも前向きになり、結果として長い目で見た時にそこに大きな差が生じてくるのは必然です。このようなプライドを胸に秘め、本校の教育魅力化の立ち上げに関わり、ここまで引き継いでくれた先人の想いを、教職員と在校生が一緒になって未来につないでいきたい、今、そう考えています。

話は変わりますが、別件でもう一つ紹介しておきたいことがあります。それは、卒業生が発行した図書です。既に、寮や図書館にも置いてありますので、手に取った人もいることでしょう。タイトルは、「地方留学生たちの三燈寮物語 ~島暮らしの全てが学びの舞台~」、著者は前田陽汰(まえだひなた)さんです。前田さんは三燈寮の四代目寮長で、現在は都内の大学に在学中です。一昨年お話をした時にも、寮生活に関わる著作の構想については伺っていましたので早速拝読しました。前田さんは本著の中で、「寮で学んだことは仲間と共に社会を創ること、寮という一つの社会を仲間と創っていました。等身大の社会を創ることに没頭していたように思います。」と言っています。本編に入る前の対談には水谷智之さん(本校学校経営補佐官)が登場し、島前地域の持つ魅力についても触れていただき、保護者から見た三燈寮については二名の保護者の方が寄稿してくださっています。先輩の前田さんが執筆に至った経緯(気付きや悩み、葛藤、そして、在校生へ伝えたいリアルな想いなど)も含めて、ぜひ手に取り一読してもらいたいと思います。

最後になりますが、新型コロナウイルスの感染防止について、特に、長期休業明けの2週間が要警戒期間であることはこれまでも繰り返し確認してきたことです。マスクの着用はもちろん、フィジカル・ディスタンスを取り、常に換気を行うなどの基本的な感染防止対策を徹底しながら体調管理に努めていきましょう。

 

以上、3学期始業式の式辞とします。

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