教員・コーディネーター

3月15日(火)コラボレーション授業「金融の歴史とライフプラン」(数学×家庭科×地歴公)レポート 〜後編〜

前編では、2021年度末に実施された「コラボレーション授業DAY」から、「金融の歴史とライフプラン」(数学×家庭科×地歴公)の様子をレポートしました。後編では、3教科の教員とコーディネーターがいかに授業をつくり上げていったのか、数学科・田中里奈先生、家庭科・曽田成先生、地歴公民科・柳原大貴先生、コーディネーター・新立みずきさんに、共創の過程を振り返っていただきました。

 

きっかけは、昼食時の雑談

「今回のコラボ授業のきっかけは、授業実施日の3〜4か月ほど前、昼食時の柳原先生との雑談でした」と振り返る田中先生。二人とも資産運用や投資に興味があり、「それぞれの教科の視点からこれをテーマに授業をしたらおもしろそう。複利計算とか!」と盛り上がったそう。2022年度から家庭科に金融教育が盛り込まれることから、「今後、金融教育の主役になる家庭科の曽田先生も誘ってみよう」と3教科のコラボでやることが決定。「面白そうだから一緒にやろう」と名乗り出た、コーディーネーターの新立さんも加わることになりました。

 

まずは、「これから生きていくうえで、お金のことを真剣に考えるきっかけにする」という授業の目的を設定。その背景には、「資産の運用・活用をしないと、将来十分に生活できるお金を持てるかわからない。お金のことを真剣に考える必要のある時代になっているという危機感がありました」と新立さんは振り返ります。さらに、数学では複利計算、公民では経済の歴史、家庭科では生涯の収入と支出(ライフプラン)と資産運用と、各教科の視点を明確にしつつ「“混ぜる”ことを意識しました」と田中先生は言います。

 

大変だけど楽しい、チームでの協働

その後は4人で何度も打ち合わせを重ね、授業プランを練っていきました。「金融というテーマで扱える要素が多すぎて、何をどのレベルまで扱うか、いかに絞り込むかに苦労しました」と柳原先生。「教材の作成も大変で、各種資料に加えて授業で使うワークシートや情報を検索できるWEBサイトの精査など、4人いたからこそできました」と振り返ります。また、「生徒にわかりやすいよう、授業のストーリーや流れを一つに収束させていくのが難しかった」(曽田先生・新立さん)という声も。それでも、チームで協働しながらつくり上げる楽しさは、全員が共通して感じていました。

 

さらに、図書館の司書さんに選んでもらった金融関係の書籍を読んだり、東京証券取引所による教員向けオンライン研修を受講して金融商品について学んだりと、先生たち自身も積極的に知識を吸収していきました。「準備を進めるなかで、自分にとっても気づきや学びが多く、コラボ授業をきっかけに人生を長期的な視点で見ることができるようになりました」と柳原先生。曽田先生も、「普段自分では読まない分野の本を読んだり金融のプロの話を聞いたりして、大人として必要な金融の知識を身に付けることができました」と言います。

 

学び多きコラボ授業を、継続性あるものに

こうして迎えたコラボ授業本番。生徒たちは普段以上に意欲的に授業に参加していたように感じたと、4名とも口を揃えます。

 

「教科パートごとに中心になる生徒が自然と変わることで、グループ活動が活発になっていた印象がありました。楽しかったという感想だけでなく、真剣に受け止めて将来を考えるきっかけになった生徒もいたようでよかったです」(田中先生)

 

「授業の準備には時間がかかりましたが、一生懸命に取り組む生徒の姿を見て、頑張った甲斐があったと思いました。自分だけで行う授業とは違った生徒の姿を見ることができました」(曽田先生)

 

「普段の授業よりも生徒がいきいきと意欲的に授業に臨んでおり、反応も良く、改めてコラボ授業の魅力を感じました」(柳原先生)

 

「お金や将来のことを甘く見ていた、3教科がつながっていて面白かった…といった感想が生徒から寄せられ、やってよかったと思えました」(新立さん)

 

 

最後に、コラボ授業を実践してみての感想と今後の展望について、先生方に語っていただきました。

 

「チームでの協働は本当に楽しかったです。大事なのは、コラボ授業を継続性あるものにしていくこと。コラボ授業を推進している島前高校はチャレンジしやすい環境でしたが、そうではない学校が多いのが現実です。埼玉県に戻ってからも、コラボ授業が実践できるような仕組みを作っていきたいと思います」(田中先生 ※2021年度、埼玉県教育委員会から出向)

 

「コラボ授業を通して、多角的な視点をもって授業づくりをしていくことの大切さ、楽しさを実感しました。そういった視点や考え方を身につけていくためにも、さまざまな教科の先生と話をすることが大事だと感じています。今後も他の教科・科目と連携した授業を行い、普段の授業にも還元できるようにしたいです」(曽田先生)

 

「一つの題材についてさまざまな教科の視点で切り口を考えることは楽しく、自分にとっての学びにもなりました。まったくかかわりがないように見える教科同士のコラボレーションほど面白いものはないと思うので、今後も教科の枠を超えたコラボ授業にチャレンジしていきたいと思います」(柳原先生)

 

「コラボ授業では授業者にも受講者にも、一つの題材を多角的・立体的に捉えるための背景知識とその組み合わせ・活用の仕方が問われるので、単教科の授業以上に“教養”というものを実感できる時間だと感じました。また、授業者が『これを授業でやりたい!』と思うアイデアを実践することの価値も、改めて感じることができました」(新立さん)

 

島前高校では2022年度も引き続き、教科の枠を超えたコラボレーション授業を実践します。どのような授業が展開されるのか、ご期待ください。

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