日々の実践

令和5年度卒業式 卒業生答辞

1日(金)、令和5年度卒業式が行われました。入学式をオンラインで行なった3年生。卒業式は、対面で挙行することができ、ご来賓の皆さま、保護者・島親さんもお招きし、在校生・教職員一丸となって精一杯送り出しました。

 

今日は、卒業式当日、卒業生代表として、西ノ島町出身の中尾彩奈さんによって読まれた答辞をご紹介します。

—————————–

冬の寒さが少しずつやわらぎ、校舎から見える海も輝きを取り戻し始めた今日この頃、私たち59名は隠岐島前高校を卒業します。自分たちの入学式をオンラインで経験した私たちは、こうしてたくさんの方に送り出していただけること、大切な日に友人と直接言葉を交わせることがいかに尊く、感謝するべきことなのかをよく知っています。今日はこのような素晴らしい式を開いていただき本当にありがとうございます。

 

私はこの3年間で島前地域やふるさとである西ノ島町について考えることが多くなりました。そのきっかけは主に2つあります。1つ目は、島の外から来た人との出会いです。1年教室の前の窓から見える景色に目を輝かせている島外生の姿や、新しく赴任されてきた先生、イベント、プログラムなどで出会った島外の方の「いい所だね」と言う言葉で今まで以上に島前が好きになり、ここで育ってきたことを誇りに思う気持ちが強くなりました。2つ目は、夢探究の時間です。1、2年生の時に島前地域の課題をみんなで挙げ、それについて調査したり、解決策を考えたりしました。その過程で、「ずっと住んでいたら分からなかったけれど、それも課題なんだ。」と、新たに気付いたり、友達のユニークな解決策を聞き、新しい発想を得たりすることもできました。こうしてより深く、そして新たな視点で島前地域を見つめられた私には変化がありました。それは将来の夢についてです。これまでは「とにかくこの職業に就きたい。」としか考えていなかったけれど、その職業に就いて何がしたいのか、地元のどのような課題を解決したいのか、仕事を通して自分がどんな人になりたいのか、など、就職したその先まで具体的に考えられるようになりました。この変化は私の中でかなり大きく、進路を決める時には軸となって支えてくれました。こうした経験は、私にとって地元にいながら様々な場所で育ち、色々な考えを持つ幅広い年代の方と関わりを持てるこの島前高校だからこそ出来たのだと思います。だから私は、3年間を振り返って、自分の将来と真摯に向き合い、進路を決定しなければならないこの高校生という時期に島前高校に通えて本当に良かったと思います。在校生の皆さんには、そんな、「島前高校を選んで良かった」と思える経験をたくさんしてほしいと思います。この高校を選んだ理由は皆さんそれぞれだと思いますが、ここでしか出来ない事がたくさんあると思うし、そこから得られる全てがきっと宝物になるはずです。友だちとの時間、人との出会い、そして自分を大切に、めいっぱい楽しく充実した時間を送ってください。

 

私たちの高校生活を、近くで支えてくださった先生方、コーディネーターの皆さん。色々な場面で、いつも真剣に向き合ってくださったおかげで私たちは新たな道を進むことができます。楽しく勉強できるように授業内容を工夫してくださったこと、気が緩んでいる時には厳しく指導してくださったこと、後ろ向きになりそうな時、強く背中を押してくださったこと、そして、いつでも信頼できる存在であり続けてくださったこと。私たちの見えないところで動いてくださっていたこともたくさんあると思います。そのすべてに卒業生を代表し心よりお礼申し上げます。これからは今まで教わったことを胸に、それぞれの夢に向かって前に進みます。

 

3年間、家族をはじめとし、それぞれの場所から応援してくださった方々。勉強に関するサポートだけでなく、将来に向けてのヒントとなるきっかけを作ってくださった学習センターのスタッフのみなさん、快く受け入れ、家族のように接してくださった島親のみなさん、高校で授業をしてくださったり、イベントの際には声をかけてくださったりと、あたたかく見守っていただいた地域のみなさん。たくさんの学びの機会と、愛情を頂きました。

 

これまで、心配をさせてしまったこと、迷惑をかけてしまったこと、きっとたくさんあったと思います。それでも私たちのことを信じ、後押ししてくださったおかげで、私たちは今日という日を迎えられています。お父さん、模試を受けに学校に行く休日の朝も、塾で帰りが遅くなる夜も、毎日港までの送迎をしてくれてありがとう。家で学校のことについて話すことは少なかったけれど、時々車の中でかけてくれる言葉にたくさん励ましてもらいました。お母さん、毎日朝早く起きて美味しいお弁当を作ってくれてありがとう。新しい環境になかなか慣れることができず、授業中も休憩時間も不安でいっぱいだった1年生の春、学校での唯一の楽しみがお弁当を食べる時間でした。まだまだ未熟な私たちは、この先も力を貸していただくことが多々あると思います。支えてくださる人がいることに感謝の気持ちを忘れず、新たな道で努力してまいりますので、これからもよろしくお願いします。

 

そして今日、共に島前高校を卒業する3年生のみんな。この3年間、色々なことがありましたね。夢探究で苦労したこと、研修旅行の夜に旅館で枕投げをしたこと、一緒にお弁当を食べたこと。思い出すときりがないくらいたくさんの思い出でいっぱいです。もちろん、その全てが楽しい思い出というわけではありません。辛かったこと、苦しかったこともたくさんありました。3年生の夏休み、一生懸命勉強しているはずなのに自分の成長が実感できず怖くて、焦って、もう投げ出したいと思ってしまった時、毎日学校や学習センターで顔を合わせる仲間の存在がどれだけ私の支えになったことか。大変な毎日の中に、少しずつ楽しいと思える瞬間をくれたこと、不安な気持ちに共感してくれたこと。さり気ない言動のひとつひとつが、私にとって大きな励みとなっていました。みんなと一緒に頑張れて本当に良かったと思うし、心の底から感謝の気持ちでいっぱいです。受験勉強に限らず、私たちは多くの場面で悩み、助け合い、共に乗り越えてきました。そんな経験を共にする仲間がここにいる3年生のみんなだったからこそ、この経験がかけがえのない思い出になったのだと思います。本当にありがとう。3年間、何度もロッカーの上の汚さを注意されるし、最後のホームルームではなぜかフォークダンスで大盛りあがりするけれど、そんなみんなのことが私はずっとずっと大好きです。

 

中学3年生の時、最後まで迷い島前高校への進学を決めましたが、卒業の日を迎えた今、3年前の自分に胸を張って「島前高校を選んで良かった。」と言うことができます。そんな高校生活でした。3年間私たちに関わってくださった全ての方に感謝の気持を込め、答辞といたします。

 

令和6年3月1日 卒業生代表 中尾彩奈

この記事をシェア