日々の実践

授業レポート「夢探究Ⅰ」 〜自分の価値観を知る〜

本校の特色あるカリキュラムの一つが「夢探究」。
多くの人と関わりながら自分自身を深く掘り下げていくことで、自分の強みや興味・関心、未来への志を明確にし、将来の方向性を見いだしていきます。今回は、5月に行われた1年生の「夢探究Ⅰ」の様子をご紹介します。

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1年生から3年生まである「夢探究」の授業は、学年部の教員全員とコーディネーターが持ち回りで担当します。この日の担当は、今年度から島前高校に赴任した木村泰之先生。「自分の価値観を知る、自分の価値観を広げる」をテーマにした授業は、「“自分らしさ”とは何か?」という問いかけからスタートしました。

「自分らしさ」ってなんですか?

ペアで話し合ったのち、生徒から最初に挙がった答えは、「個性」というワードでした。教室にいるコーディネーターがすかさず、「個性って何? 普段、当たり前に使っている言葉だけど、何だろう?」と問いかけます。

さらに、「素の自分、ありのままの自分」「喜怒哀楽を感じ、魂を動かせる状態」という意見も出ました。

「“自分らしさ”にはいろんな解釈があるけど、総じて言うと、“自分が大切だと思うことを大切にできている状態=自分らしく生きている”ということではないかと思います。そこで、自分が大切だと思うこと、つまり、自分にとって大切な価値観を知ることを今日のテーマにしたいと思います」

と木村先生。さらに、こう続けます。

「価値観は“作る”ものではなく、“発見する”もの。新しくつくることももちろんいいけど、君たちが日々感じていることの中にすでにあるものにも目を向けてほしい。ただし、価値観というのは不変ではなく、人との出会いによってどんどん変わっていくよ」

ここで木村先生は、自身の過去の失恋体験を紹介(詳細は割愛します!)。「僕のように、失敗は変わるチャンスとも言えます。みんなにも、失敗も含めていろんな体験をしてもらいたい」と話されました。

続いて、自分の価値観を知るためのワークへ移ります。
生徒たちは、「挑戦・チャレンジ」、「正直さ」、「社会貢献」、「努力」、「家族・友人」など、配布された「バリューシート」に書かれた48の価値観の中から、「自分にとって大切な価値観ベスト3」を選びます。もちろんバリューシートにないものでも構いません。

バリューシート

選ぶにあたっては、「過去を振り返っての理由」と「未来を考えての理由」を書き出します。スパッと選んだ生徒もいれば、あれでもないこれでもないと選び切れない生徒も。選んだものの「理由」で手が止まる生徒も少なくありませんでしたが、それぞれのやり方で自分の過去や内面と向き合っているようでした。

それぞれがレポートに記入したのち、3〜4人のグループでシェア。自分が大切にしている価値観について、なぜ大切なのか、きっかけやエピソードまで含めてお互いに共有しました。なかには、過去にいじめを受けた経験を話す生徒も。グループのメンバーも真剣な表情で聞き入っていました。

グループでシェアした後は、全体でシェア。「どんな気づきがあった?」という木村先生の問いかけに、「けっこう似てて驚いた」、「1位は似てたけど、他は全然違っていておもしろかった」などの意見が挙がりました。さらに、授業に入っていた他の先生やコーディネーターたちも、自分が大切にしている価値観を発表。生徒たちも興味津々の様子で耳を傾けていました。

共通点と相違点を通じて自分らしさに気づくことも

最後に木村先生は、こう締めくくりました。

「自分の価値観の範囲が狭いと、(他の価値観を)受け止められない。でも、自分の中にいろんな価値観があると、(他の価値観も)受け止められる。自分の世界を広げるというのは、価値観を広げるということです。そして、価値観は、たくさんの人と出会い、関わることで広がっていきます。本を読んだりすることももちろん大切だけど、生身の、そして本気の人間に会うことが大切です。これからみんなは、夢探究をはじめさまざまなシーンにおいて、チームで活動をしていきます。チームというのは、さまざまな価値観の集まりです。どの価値観が正しいなんていう正解はありません。そして、これまでの価値観を更新しながら(ときに崩しながら)新たに創り上げていくのが、この島前高校らしさなんじゃないかと思います」

気づいたことや感想をレポートに記入し、授業は終了。
ある女子生徒は、「それぞれ大切な価値観は違ったけど、“未来を考えての理由”として人や社会との関係性を挙げている人が多くて、共通項があって興味深かったです」と話してくれました。また、授業を終えた木村先生は、「島前高校には生まれ育った場所も環境も異なる多様な生徒が集まっていて、日常生活の中でいろんな価値観に出会えるのがどの高校にもない強み。夢探究でその強みをさらに磨いて深めていきたい」と語ってくれました。

#この日は身体測定があり、男子がいない時間・女子がいない時間がありました
半分がいない難しい状況でも木村先生の授業進行はスムースでした

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