インタビュー特集2026年6月12日 (金)
【高二留学体験記】北海道で見つけた「自分らしさ」 ——一年間の越境が変えたもの
【高二留学体験記】
北海道で見つけた「自分らしさ」
——一年間の越境が変えたもの
鈴木宏栄さん(3年生) 大空高校への高二留学経験者
隠岐島前高校には、高校2年生の一年間だけ国内の他の高校に留学できる「高二留学」という制度があります。今回は、北海道の大空高校で一年間を過ごし、今年3年生として隠岐に戻ってきた鈴木宏栄さんにインタビューしました。
飛び込んだきっかけは、先輩の「楽しそうな姿」
——高二留学を決めた理由を聞かせてください。
「自分が1年生のときに、高2留学生として来ていたゆうかさんがいて、その人がすごく楽しそうで、こっちにめちゃくちゃ馴染んでいたんです。一年間だけ違うところに飛び込める姿がすごく尊敬できて、自分も行きたいってなりました。」
さらに、大空高校への短期訪問で友だちができたこと、「北海道」という場所への漠然とした憧れが重なり、気持ちはまっすぐに固まっていったといいます。不安はほとんどなかったと笑顔で話してくれました。
「飛行機ちゃんと乗れるかな、ぐらいしか不安がなかったです。期待が上回りすぎて。」
最初の壁——「一年間の壁」を超えるために
大空高校に着いてすぐ、宏栄さんは難しさにぶつかります。
「1年間の壁があるじゃないですか。すでに出来上がっている人間関係の中に入っていくのがすごく難しかったです、最初は。」
同学年だけに声をかけ続けるうちに、気づいたら他学年の友だちの方が増えていた——宏栄さんはそのとき「同じ学年にこだわらず、話せる人から話していこう」とマインドを切り替えたと振り返ります。結果的に全学年と仲良くなり、帰島後も活発にやりとりが続いています。
「当たり前」が崩れた瞬間
大空高校での生活で一番驚いたのは、学校文化の違いでした。
「こっち(隠岐島前)って挨拶がめちゃくちゃ活発で、通りすがりでも先輩に「お疲れ様です」とか「さん付け」とかがあるじゃないですか。あれが向こうにはなくて、最初はすごく慣れなかったです。」
一方、大空高校では同学年の団結力が非常に強く、それはそれで「いいな」と感じたといいます。授業の形式の違いも大きなものでした。
「向こうは自分のペースで学習を進めていいよっていう感じで、先生が前で授業していても、パソコンで授業動画を見ながら自分で進める人もいて。こっちに帰ってきてから「パソコン閉じて」って言われたとき、えっって思いました。」
「早く学校に行きたい」——初めて思えた冬休み
宏栄さんが「慣れてきたな」と感じたのは、冬休みのことでした。
「もともとずっと家にいたいタイプで、学校にあまり通いたくないくらいだったんです。でも去年の冬休みに、初めて「早く学校に行きたい」「みんなに会いたい」って思えて。これまでそんなこと思ったことがなかったから、ああ慣れてきたんだなって。」
その変化の理由として、宏栄さんは「自分の好きなことや性格をさらけ出せる友だちと先生がいたから」と話します。大空高校には好きなことを素直に話せる空気があり、宏栄さんは鳥が好きだということを周りに自然に伝えられるようになっていました。
「自分は自分でいい」——越境が変えた価値観
一年間を通じて、宏栄さんの内面に大きな変化が生まれました。
「自分に自信を持てるようになったし、「人は人だよね」「自分は自分だよね」っていうスタンスで過ごせるようになりました。一年生のときは人と自分を比べて劣等感を持ったりしていたんですけど、今は同じことが起きても楽観的に受け止められるようになった気がします。」
また、時間への向き合い方も変わりました。一年間という期限がある留学を終えて帰ってきたとき、「時間って本当に有限だったんだ」としみじみ感じたといいます。
「もっとあそこに行きたかった、もっとあの人と話したかったって思えるからこそ、1日1日を濃く過ごしていこうって。昨年度の3学期から日記をつけ始めました。」
「高二留学を、もっと多くの人に知ってほしい」
今後やってみたいこととして、宏栄さんは迷わず答えてくれました。
「高二留学をもっと広めていきたいです。向こうにいたとき、こういう制度を知らなかった人が結構多くて。自分が経験してみて、後悔がまったくなかったから、やっぱりもっとみんなに知ってほしいなって思います。」
一年間の越境は、宏栄さんに「自分らしさ」と「時間の有限性」という二つの大切なものを手渡しました。そしてその経験が、今度は誰かに渡す番だという気持ちへと変わっています。
(取材・文:隠岐島前高校 宮野準也 2026年6月)
