インタビュー特集

【教職員インタビュー】「数学は敵じゃない、社会を生きるための言葉だ」 ――数学×自学自習で、生徒と対等に向き合う中西先生の挑戦――

今回は、島前高校で数学を教えて4年目になる、中西先生のインタビューをお届けします。

「解けなくていい」という一見ユニークな数学の授業に込められた真意や、生徒2〜3人に教員1人という圧倒的な環境の魅力、そして生徒たちへの熱いメッセージに迫ります。

 

「数学が苦手……」「数式を見るだけで頭が痛くなる」 そんな人にこそ、ぜひ読んでほしい記事です。

 

 

大好物は二郎系ラーメン!?  

――中西先生、本日はよろしくお願いします!まずは自己紹介をお願いします。

中西:よろしくお願いします!島根県松江市出身で、大学を卒業して島前高校に赴任し、今年で4年目になりました。 好きな食べ物は、「二郎系ラーメン」です! たまにネットでスープと麺を自分でお取り寄せするんですよ。自分でキャベツやもやしをたっぷり用意して、お腹いっぱい食べています。今晩は野菜とお肉たっぷりの回鍋肉(ホイコーロー)を作る予定です(笑)。

 

「なりたいもの」ではなく「自分にできること」を突き詰めた教員への道

――中西先生は松江のご出身で、大学卒業後に島前高校に赴任されて今年で4年目になるんですね。やはり、昔から教員を目指されていたのでしょうか。

中西: 実は、最初から「絶対に先生になりたい!」と思っていたわけではないんです。大学3年生の時に一般企業のインターンシップに参加して、ゼロから新しい商品を企画・プレゼンするようなグループワークを経験したのですが、その時に「あ、自分はこういうゼロから何かを作り出す活動が苦手だな」と痛感しまして(笑)。

――自分自身の適性と向き合うきっかけになったのですね。

中西: はい。そこから、将来やりたいことよりも「自分に今できることは何だろう?」という視点で考え直しました。高校生の頃、算数や数学が得意だったこともあって、受験期に空いている教室で友達に数学を教える機会がよくあったんです。その時に上手く教えられなくて悔しかったり、逆に「ありがとう!」と喜んでもらえて嬉しかったりした経験が頭に浮かんで。「これなら自分にできるし、やりたいことをやっていこう」と、教員1本に絞ることを決めました。

――島前高校への赴任はご自身で希望されたのですか?

中西: 僕は教員の採用試験を受けつつ、講師としてどこでも働く覚悟で就職活動をしていました。家族に教員は一人もいなくて、理系も僕だけという環境だったので、業界の情報も特になく、「拾ってくれる場所ならどこでも行きます!」と希望を出していたんです。そうしたら、大学の最後の授業が終わったまさにその日に電話をいただき、この隠岐島前高校への赴任が決まりました。本当にミラクルなタイミングでしたね。

 

 

「解けなくていい」? 数学を“言語”として翻訳するユニークな授業

――今年度は「教員マイプロ」として、数学をテーマにしたユニークなプロジェクトをされていると伺いました。

中西: はい。学習センター(公営塾)とも連携して、「数学を自学できる姿勢を身につけよう」という講座を企画・実施しています。教科書の例題を自分で理解し、自力で練習問題を解き進められるようになることをゴールにしています。

――素晴らしい取り組みですね。実際の講座ではどのような工夫をされたのですか?

中西: 第1回のテーマは「問題文を読んで、その意味を他人に説明できるようになること」に設定しました。そこで生徒たちには最初に「今日は問題を解かなくていいよ」と伝えたんです。

――数学の講座なのに「解かなくていい」というのは驚きです!

中西: 数学って、一種の「言語」だと思うんです。問題文には難しい専門用語がたくさん並びますが、これらは英語の「英単語」と同じ。数学が得意な人は、頭の中でその専門用語を日常の言葉にスムーズに「翻訳」できているんですよ。

例えば、「少なくとも1枚が偶数である確率」という問題文があったとします。この「少なくとも」という言葉が苦手な生徒にとっては引っかかるポイントです。それを「最低でも1枚は偶数ならいいんだよね」とか「全部が奇数じゃなければいいんだよね」と、自分なりの日常言葉に翻訳するトレーニングを行いました。

――なるほど。解くことよりも、まずは「問題の意味を正しく理解する」ことにフォーカスしたのですね。

中西: そうです。問題の意味が本当に分かれば、人間って自然と「解いてみたくなる」ものなんですよ。実際、参加してくれた8人ほどの生徒たちは、「解かなくていいよ」と言ったのに、嬉しそうに勝手に問題を解き始めてしまったんです(笑)。しかも、それまで苦手で解けなかった類似問題が、その場でスルッと解けていました。問題文を正しく翻訳して理解することが、結果的に「解ける」に直結するということを、身をもって体感してもらえた瞬間でした。

 

 

数学を通して伝えたいのは、社会でも通用する「考え方」と「自学自習の力」

――「数学嫌い」を克服する大きなヒントになりそうです。

中西: 僕は生徒たちに「数学を好きになってほしい」とまでは思っていないんです。それよりも、数学というツールを通して「考え方」を学んでほしい。

例えば、次の第2回講座では「解説の読み方と活用方法」をテーマにしています。自分で勉強するとき、解説を読むことは誰でもしますよね。でも、ただ答えを眺めて終わっていないか?と。

――確かに、解説を読んで「分かった気になって終わり」にしてしまう生徒は多そうです。

中西: 僕にとって、数学の「解答・解説」とは数式の羅列ではなく、「数学の知識を持った誰もが理解でき、情報が過不足なくまとめられた文章」なんです。だからこそ、解説を読むときは「なぜこの行から次の行へ進むのか」という文章としての構造や意図を読み解く必要があります。

解説を読んでも分からない理由は大きく分けて2つあります。1つは単純な知識不足、もう1つは「何が分からないかが自分でも分からない」状態。だからこそ、分からない言葉を自分で調べたり、実際に手を動かして計算してみたりする。そういう「自学自習の癖」「物事を論理的に突き詰める考え方」は、将来社会に出てからも、どんな分野でも役に立つ武器になります。

 

 

生徒2〜3人に教員1人。この“異常な”ほど手厚い環境を、全力で使い倒してほしい 

――数学に対する熱い思いをお聞きしたところで・・・(笑)島前高校に赴任されて4年目を迎え、改めてこの学校の魅力はどういったところにあると感じますか?

中西: 僕は生徒たちにいつも言っているのですが、「この隠岐島前の環境は、普通では考えられないくらい贅沢でレアだよ」ということです。

僕自身の高校時代を振り返ると、職員室はいつも重たい空気が流れていて、先生方の顔もどこか疲れて見えて、生徒としては絶対に入りたくない場所でした。でも、島前高校の職員室はいつも笑い声があふれています。先生たちが本当に楽しそうに仕事をしているんです。

そして何より、生徒2〜3人に対して教員が1人ついて一緒に勉強をサポートできるような、驚くほど手厚い環境があります。僕自身も今年度は、1学期の間、仕事終わりに毎週必ず学習センター(塾)に足を運んで、生徒たちと同じ空間で自習をしていました。生徒から呼び出されて、夜7時から10時まで、夕飯を食べるのも忘れて熱中して数学を教えることもあります。

――学校の先生が塾にまで来てそこまでサポートしてくれるなんて、他ではなかなか聞かない環境ですね。

中西: 本当にあり得ない環境だと思います(笑)。だからこそ、生徒たちには「僕たち教員に感謝なんてしなくていいから、とにかく全力で使い倒してほしい!」と伝えたいです。

僕たちは教員と生徒という関係ですが、お互いに一人の人間として対等だと思っています。対等だからこそ、同じ目線で対話したい。2学期も学習センターでの自習や対話を続けていきます。この島前高校という最高の環境を、遠慮せずに使い倒して、自分の未来を切り拓く経験をたくさん積んでほしいですね。

 

(取材・文:隠岐島前高校事務 三坂綾美 2026年8月)

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