インタビュー特集

令和3年度 3ヶ年皆勤受賞者インタビュー

1日(火)には、本校の卒業式がありましたが、式後、3ヵ年皆勤賞の授与式がありました。今年は、知夫村出身の能海 瑠生さん、番谷 日喜さん、島留学生の公受 暖さんが受賞されました。

(左:番谷 日喜さん、右:能海 瑠生さん)


(公受 暖さん)

 

 

今回は、3ヵ年皆勤賞を祝うと共に、元気な時も大変な時も、知夫村から毎日船で学校に通い続け、授業を受け続けた能海さんと番谷さん、そして、日頃から学校の健康づくりに尽力している藤田養護教諭にインタビューをしました。

 

3ヵ年皆勤をとってみて

宮野:3ヵ年皆勤をとって、率直な気持ちを教えてください

能海:狙い通りだな、と思いました(笑)最初から狙っていたので、達成できてよかったなと思いました。

宮野:それはいつから決めていたんですか?

能海:高校に入学する時です。

宮野:なぜその時に、3ヵ年皆勤を狙おうと決めていたんですか?

能海:将来は、医療系の仕事に進もうと思っていたので、医療系の仕事は、人を診る前に自分のことがしっかりできていないといけないと考えていて、3ヵ年皆勤をとったら、自分に自信がつくと思っていたから目標にしていました。

番谷:僕は、嬉しい気持ちはあるのですけど、正直、皆勤なのか、という感じです。結果的に皆勤賞でした

宮野:真逆ですね(笑)

全員:真逆ですね(笑)

 

3年間、一度も休まず登校し、授業を受け続けた秘訣

能海:私の場合は、やっぱり目標があったからだと思います。中学校の職場体験で、保健師の仕事を体験した時に、保健師の方がおっしゃっていた「保健師は、人の健康をみる前に、まずは自分が健康であることが大切だよ。」と教えていただいたことがきっかけで3年休まず通うぞ、と目標を決めました。あとは、ストレスを溜め込まないことも大事だと思います。病は気からっていうと思うのですが、体調が悪くてもそう思わないようにしたり、風邪もひかないように気を張っていたりしました。

宮野:ストレスを溜めない工夫とは、例えばどんなことでしたか?

能海:辛いことがあっても、工夫してポジティブに考えることや、悩みがある時に友達に相談することなどをしていました。

 

宮野:番谷さんはどうですか?何か秘訣がありますか?

番谷:自分の体質もあると思います。大体体調を崩す時は休みの日で、平日にあまり体調を崩すことがありませんでした。意識していたことは、自分にあまり負荷をかけすぎないことです。部活に入っていなかったので、放課後は勉強をずっと頑張っていたのですが、頑張りすぎないように休憩をとることなどをしていました。

 

宮野:藤田先生、今の話を受けながら、感想をもらえますか?

藤田:まずはおめでとうございます。これは、本当にすごいことだと思います。今聞いてみると、しっかり考えを持っていたんだなと知って、さらにすごいと思いました。高校の皆勤賞は、「学校を休まないこと」だけではなくて、「学校に登校して、授業を休まないこと」なんです。コンディションが悪い時も含めて、それを3年間やり続けたことは、すごいことですよ。

宮野:本当にそうですね。

藤田:病気になることが悪いことではなくて、休むべき時に休むことが必要だとわかっている上で、休まないことができているっていうことでしたよね。すごいです。

宮野:先ほど能海さんが言っていた、「休まないという目標を立てること」や番谷さんのように「自分に負荷をかけないようにする」ということは、健康を保つ上で重要な観点なのでしょうか?

藤田:そうだと思います。それって、みんながわかっていることだと思うんです。自分にとって大事なことを、自身で認識し、実際に実行できていることが、とても立派だと思います。身体は根本なので、何かをしようとしても元気がないとできない時があります。逆に、身体が元気でも気持ちが元気じゃないと動けない時もあります。そのバランスをとってることが大事なんです。

宮野:なるほど。

藤田先生:また、この2人は、知夫村から朝早い船に乗って来ていました。高校1年生の時は、登校に慣れない時期もあったと思うので、特に大変だったと思います。付加価値つきますよね(笑)

 

大変な時にどう乗り越えたのか?

宮野:「今日は学校に行くのが辛いなぁ。」と思った時はありましたか?

能海:ありました。学校というよりは授業です。夢探究でチームの探究が進まなくて辛い時や、理系の授業が分からなくなった時に、「行きたくないなぁ。」と思う時がありました。

宮野:その時はどう乗り越えたんですか?

能海:夢探究では、授業外でチームのメンバーと仲良くなることを意識しました。その時は、チームで動いていたので、授業の時間になって、「さぁ、スタート」となるよりも、それ以外の時間で、お互いに話して、関係性を深めておくと、チームの探究も進むのかなと思ってそうしていました。理系の授業では、「やったことを覚える時間」と割り切ってそれに徹しました。本当は、「これはなんでそうなるんだろう?」と考えて取り組むほうが理解が進むと思うのですが、そこまでついていけていなかったので、「とにかくやったことを覚えるんだ」と割り切りました。

宮野:嫌なことがある時に、あきらめてしまう人も多いと思いますが、自分なりに工夫して乗り越えたんですね。

 

宮野:番谷さんはいかがですか?

番谷:行きたくない時は、しょっちゅうありました。

全員:へー!!

番谷:特に自分の苦手な英作文の授業がある時は、「行きたくないなぁ」と毎日思っていました。英語の文章をそのまま丸暗記しなければならない時が、個人的には大変でした。

宮野:それはどう乗り越えてきたんですか?

番谷:その時は、自分の好きな授業に意識を向けるようにしていました。「この授業が終わったら好きな授業が待っている。」と思うようにして、乗り越えてきました。

宮野:ちなみに、好きな授業はなんですか?

番谷:日本史です!

宮野:ですよね(笑)

 

保健室の先生として

宮野:日頃より、生徒の健康づくりに気をかけていることは何ですか?

藤田:人には、バイオリズムがあります。その時の状況も加わって、授業だったり、部活だったり、友達のことだったり、気分が下がっちゃう時ってあると思うんです。その時に、今のこの人にとってこの状況は、休んだほうがいいのか、負荷がある方が伸びるのか、ということを考えるようにしています。また、私たち大人は、環境づくりをすることはできるんですが、本人に代わって授業に出ることはできません。本人にしかできないことがあるので、2人のように、本人が自覚し、頑張ることができるということが大切だと思います。

 

コロナ禍を過ごして

宮野:特にこの2年間、コロナ禍にあって、それまでの日常とは異なる日々を過ごすことになりました。まずは学校として、環境づくりの面で意識していたことはありますか?

藤田:「正しく恐れる」って聞いたことがありますか?最初のころによくニュースで言われていました。まだコロナが何かわからない時に「とりあえず中止」ということもよくありました。だんだんとコロナが何かわかってきて、適切に「これならできる」となっていきました。情報を正確につかみ、正しく恐れることが重要でした。もう一つは、偏見の観点です。コロナでない他の病気もそうですが、病気になる人やことが悪いのではないと私は思います。また、病気にかかるかもしれない不安と、予防のためにすることを考えた人への接し方には、気を配りました。掃除の時間に消毒をするなど工夫しながら学校の、集団で動ける強み、を活かしながら対応していきました。以前参加した講演会の中で、「安心安全という言葉があるが、安全があれば安心できる」という話があって、私は、「安全な環境をつくる」ことを努めようと頑張っていました。

宮野:なるほど。確かにそうですね。安全があれば安心ができる、初めて聞きましたがとても大事なことですね。

 

宮野:2人はどうでしたか?コロナ禍の中で、どういうことを思って過ごしていましたか?

能海:「いつかかってもおかしくない」と思って、気を張って過ごしました。受験の時は、遠くに行くことが多かったのですが、基本的なことを意識して過ごしました。手洗い・うがいをする、マスクをつける、ビニール手袋を使う、外にはあまり出歩かないなどをして過ごしました。

宮野:基本的なことを守れるって、大事だし、すごいですよね。

番谷:感染者にならないように、気をつけられることを僕も意識しました。手洗い・うがいや換気は意識して過ごしました。

藤田:当たり前のことだけど、とても大事だし、それを行動しているということがすごいことだよね。

 

在校生や新入生に向けて

宮野:在校生や新入生に向けて、メッセージがあればもらいたいです。

能海:コロナとか、変えられない状況って絶対にあるじゃないですか。その上で、私が健康でいる秘訣は、決められた環境の中でどう楽しむかを考えて過ごすことだったので、そういった工夫をすることが大切だと思います。私は、学校に行くとスイッチONになるタイプなので、「行けばスイッチが入る」と思って、学校に行っていました。でもそれは、私の特性でもあると思うので、本当に休んだほうがいい時は休んだほうがいいと思います。自分の特性に合わせて自分との付き合い方を見つけるのがいいと思います。

番谷:無理をしすぎると体調を崩しやすくなったり、嫌になったりすると思うので、無理をしすぎずに、自分の好きなことをやることが大事だと思います。あと、苦手な授業がある人が多いと思うんです。自分は、好きな授業があったので、そっちに切り替えられたんですが、全部の授業が得意じゃない人もいると思うんです。でも、授業を受け続けていると、苦手意識がなくなってくることがあります。受け続けていると「好き」までいかなくても「嫌いじゃなくなる」ことはあると思うので、最初頑張って、受け続けることが大事だと思います。

全員:すごい!なるほど。

宮野:藤田先生からもいかがですか?

藤田:健康に関してだけではなくて、いつもメッセージにしているのは「人から応援される人になってください」と伝えています。幸せの形は人それぞれですが、卒業した後に、それぞれの人生が幸せに歩めることをいつも願っています。人から応援される人になれば、助けてもらうこともできます。この2人も、皆勤賞になった背景には、保護者の方や友達、地域の人や先生方の応援があったんだと思うんです。もちろん本人の力もありながら、そうやって応援される人になることで、いろいろなことを引き寄せる力があったと思うんです。

宮野:ちなみに2人は、影響された大人はいますか?

能海:高校で皆勤賞を目指そうと決めたのは、中学校の職場体験で、保健師さんの仕事をしたことです。その時に、保健師さんが、「他人の前に自分の健康」と言っていて、強く納得したことが大きいと思います。あとは、両親もいそかぜで通勤だったので、家族でいそかぜ(知夫村と海士町をつなぐ内航船)に乗ることが習慣になっていたこともあるかもしれません(笑)

番谷:人ではないのですが、小中学校を過ごしているうちに、自分の中で、学校に行って授業を真面目に受けることが当たり前になっていたのかなと思います。

 

インタビュー所感

学校に来ること、授業を受けること、一見当たり前に思えることではありますが、それを3年間やり通した人は3名でした。「当たり前のことをやり続ける」ことは、もしかしたらとてもすごいことなのではないか?もしかしたらその背景には、何かがあるのではないか?そう思ったのがインタビューをしたいと思ったきっかけでした。そして今回、(残念ながら公受さんにはできませんでしたが、)知夫村から3年間1日も休まずに学校に通い、授業を受け続けた2人、日頃より、生徒の健康を気にかけてくださっている藤田先生の3名にインタビューをしてみました。

ご覧の通り、そこには、3年間休まずに、学校に通い、授業を受け続けられた「理由」がありました。目立ったことは、見えやすく、分かりやすい。スポットが当たりやすいこともあります。しかし、当たり前のことを続けることも、とても尊く、すごいことだと感じました。

好きな授業を受ける、苦手な授業に向き合う、やりたいことをやる、苦手なことに挑戦するなど、本校には様々な機会があることが魅力の1つですが、こうして、粘り強くやり続ける力を持つ生徒がいることも本校の誇りだと思いました。

 

インタビュー:島前教育魅力化コーディネーター  宮野準也

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