校長室より

令和2年度入学式 校長式辞

校舎へと続く坂道にも春の香りが満ち溢れる今日この佳き日、59名の新入生を迎えることができますことは、本校の教職員並びに在校生にとって大きな喜びであります。

はじめに一言お詫びを申し上げます。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための対応として、これまで島根県教育委員会の指示を受け、入学式及び関連行事の実施判断を行ってまいりました。結果的に、オンラインにより式を執り行うことになり、事前に予定していた入学予定者説明会についても、動画配信で対応させていただきました。また、既にお知らせしているとおり、島外生の来島・帰島に係る特別な対応により、全校生徒が揃って新年度を開始する時期が遅れることにつきまして、新入生・保護者の皆様には、大変ご心配とご迷惑をお掛けいたしました。

今後も、この感染症に係る情報については、本校ホームページに随時掲載していきますので、内容をこまめにチェックするようにしてください。専門家の予測によると、今後も感染拡大が懸念される状況にあり、一人ひとりの自覚ある行動が求められます。自分自身が感染しないように細心の注意を払いながら、これからは自分自身が感染していることも想定をして他人に感染させない行動がより一層求められています。

さて、保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。高校での3年間は、人生の方向性を決定する上で大切な、また悩みや苦しみの多い時期でもあります。今後も、遠く離れた地で生活をすることになるお子様との安心できる親子関係づくりに努めていただき、そうした温かな家庭と時には厳しくもある学校とが緊密な連携を図り、お子様の成長をサポートしていきたいと考えます。私たち教職員は、お子様が自らの課題を自覚し、生きる道を切り開いていけるよう、全力で支援してまいります。保護者の皆様におかれましても、本校の教育方針を十分にご理解いただき、ご支援とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

只今入学を許可しました59名の新入生の皆さん、入学おめでとう。本校は今年創立65年目を迎えますが、地域の熱意で開校し昭和33年に「全国初の全日制分校」となった歴史を経て、現在離島では全国でも稀な全日制普通科校です。

本校では、目指したい人材像を「グローカル人材」と定めています。グローバルセンスとローカルセンスの両方を持ち合わせ、広い視野で考えながら、足元から実践していける人材、ふるさとを思いながら、自分自身や地域の特性を活かして活躍できる人材、このグローカル人材を生徒、教職員がともに目指していきます。自身の主体的な決断によって、志を持って本校の門をたたいてくれた新入生の皆さんと在校生、教職員が力を合わせて、永遠に持続可能で魅力的な学校となるようともに努力していきましょう。

ここで、皆さんに本校の校歌と校訓について少しお話をしておきます。本校の校歌は、全国的にも珍しいとされる、生徒の作詞によるものです。昭和30年に隠岐高校分校定時制として開校した際の1期生の合作で昭和31年に制定され、昭和33年に全日制分校となり、昭和40年に島根県立隠岐島前高等学校として独立するという歴史の中で、制定当時のまま今も歌い継がれています。1番から3番まで「ああ美しきこの島に」と歌われ、他のどんな場所とも異なる、この島、この島前地域で学ぶことの喜びと誇りを感じさせます。随所に豊かな自然が表現され、大いなる自然に包み込まれつつ、常に「伸びよう」と互いに呼びかけ合う歌詞から脈々と感じられるのは、澄みきった若々しさとみなぎる決意です。

そして、校訓の由来ともなった「真理・理想・進取」の3つの言葉です。実はこの校訓は、平成元年度に制定されており、つまり、後の校訓につながるこの校歌の歌詞には、生徒たちがその意気と活力で学校を築き上げ、そして創りあげてきた本校ならではの伝統の力を感じさせます。新入生のみなさんも、この校歌・校訓を胸に刻み、本校で学ぶことに喜びと誇りを持って充実した高校生活を送ってください。

次に、新入生の皆さんに、高校生活を送る上で大切にしてほしいことを、1つ伝えておきます。一般的にわれわれの人格は、概ね20年で完成すると言われます。20年前後で完成され、その後、多少の知恵は身に着けたとしてもその本質は変わりません。人格とは人柄、他人に対する思いやりや物事を謙虚に受け止められる資質は、豊かな人間関係を築くうえでの基盤となり、自分の可能性を大きく広げてくれます。一方で、言い訳や他人の悪口を重ねるような言動は、発展的な関係性を阻害し、社会のなかで受け入れられる要素もありません。高校の3年間が、皆さん一人ひとりの人格形成に大きな影響を与える大切な時期であることを皆さん自身がまずしっかりと自覚をしてください。友人同士や地域の方々との関係性を大切にし、まず自分から思いやりを持ち、その気持ちを具体的な言葉や行動に置き換えて実践していきましょう。

1つの思いやりに満ちた言葉や行動は、次の思いやりのある言動につながり、その輪は確実に広がっていきます。他者に感謝をし、思いやりを持って接する、その実践がお互いの学びを保証し、安心して生活できる環境と関係性を創っていくことにつながります。われわれ教職員も、皆さんにとってこの3年間が人生の基盤となる重要な時期であることを認識し、しっかりと支援していく覚悟です。

最後になりますが、皆さんが活力と熱意を持って高校生活を送られんことを祈念し、また学校と地域が一体となってしっかりと皆さんを支えていくことを約束し、式辞といたします。

 

令和2年4月9日
島根県立隠岐島前高等学校
校長 井筒 秀明

 

※令和2年度の入学式は、新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴い、オンラインにて挙行されました

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