校長室より

【令和5年度第3学期始業式式辞】 「周りも見つめよ、幸せにも質がある」(書き起こし)

皆さん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

実は先ほどまで「おめでとうございます」という言葉を発してもよいものかどうか悩んでいました。元日には能登地方を大きな地震が襲い、二日には羽田空港で航空機事故が発生。そして3日には現在の本校の島留学制度整備などに尽力くださった山内前町長様がお亡くなりになりました。様々思い起こすと言葉に詰まってしまいます。

ですが、令和6年という新しい年が始まったこと、切り替わりの節目でありますのであらためて「おめでとうございます」。

さて、2学期終業式が臨時休校で行えませんでしたので、今日の話はそのとき準備していたものを、と思っていました。忘れないようにとメモ書きしておいたものも準備していましたが、皆さんの顔を見て、さらに新年からの様々な出来事が頭をよぎり、即興ではありますが内容を変更します。まとまりのない話となると思いますが、皆さんが上手にまとめてくれると信じて、語ります。

12月の半ば頃、ある生徒さんと掃除の時間に話をする機会がありました。その生徒さんは髪を切っていて、私は「髪を切ったんだね」と声をかけました。そのやりとりをとおしてヘアドネーションという言葉が頭に浮かびました。ヘアドネーションとは、癌や白血病、不慮の事故などにより髪の毛を失った子供たちに、主に寄付された人毛による医療用ウィッグを無償提供する活動です。話し続けるうちにその生徒さんも「人のためになっている」ということにあらためて気付いた様子で、私も「自分の『叶えたい』が、誰かの『叶えたい』を同時に叶えることができる」って素晴らしいことだな感じた時間でした。私は何かできているのかなと考えてみると、私は、3~4ヶ月に1回、献血をしています。献血をすると、血液検査をしてもらえ、自分の健康をチェックできるからという動機としては褒められたものではないかもしれませんが、自分が献血した血液が、誰かを助けているかもしれないと思うと、とてもやりがいを感じます。

いまこの場で皆さんに「将来幸せになりたいですか」と聞けば、多くの人は「そうなりたい」と答えると思います。人間は誰でも、「自らのやりたい」を叶えるなどの小さな幸福を積み重ねながら、トータルとして幸せになりたいと思っています。しかし、哲学者のJ.S・ミルは幸せにはレベルの高いものと低いものがあると言っています。

簡単に言ってしまえば、レベルの高い幸福とは、自分だけでなく、周りの人たちも幸せにできうるもの。一方、レベルの低い幸福とは、自分のみの幸せを求め、その際に周囲には配慮がなされないもののことです。ヘアドネーションはどうでしょうか?どちらになると思いますか。私は、皆さんがどのような職業に就くかについても、このような考えを持ちながら将来を考えてほしいと思います。この仕事に就くことで、自らはどのような生きがいややりがいを感じつつ、同時に周りの人たちや社会にどのような貢献ができうるのか、影響を与えるのかについて。ある意味職業は、レベルの高い幸福の一つかもしれません。自分の強みを生かして幸せになれる手段でもあると同時に、周りの人の幸せや笑顔を増やすこともできると考えれば。

本校は「踏み込みの島前」という合い言葉のもと、力強く進み続ける学校です。今年はぜひともその「踏み込みは周囲の人々を幸せに、あるいは笑顔にできるのか」ということも、頭の片隅においてみてください。

内容の急な変更でしたので、まとまりのない話となったこと申し訳ありませんでした。

さあ第三学期のスタートです。1年生、2年生は進級に向けてしっかりやるべきことをおこない、気持ちよく上級学年へと進む準備をしてください。3年生は卒業準備とともに、多くの人はすでに18歳、民法上の成人年齢に達しているはずです。大人の自覚を深める時期としてください。

今年も、皆さんにとって良い一年になりますように。

以上。

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