校長室より

【メディアリテラシー再考】

インフルエンザによる臨時休校を終え、7日から1週間遅れの期末考査が始まった。試験前のプレッシャーは長くなったが、やはり学校に出校できるという安堵感のような喜びを生徒から感じた。「校長先生は元気でしたか?」、「校長先生、自分たちがいないから暇だったでしょう?」と多くの声もかけてもらった。

さて、先月末、スマイリーキクチさんが本校を訪問くださった。テレビで本校を知り、興味関心をお持ちになったとのこと。2時間半のご訪問の中で本校生徒の授業風景等参観いただき「自分たちが高校生の時とは、授業の方法が全く違いますね」、「生徒さんの反応がよく、授業に参加している感がよくわかります」、「生徒さんたちの表情が明るいですね」等々、多くのお褒めの言葉をいただいた。

だが、訪問いただいた時間の大部分、私とキクチさんとで盛り上がったことは「メディアリテラシー教育」についてであった。ネット上に「殺人事件の関係者」とデマを書き込まれ、10年に渡る誹謗中傷に苦しまれた経験をお持ちである。私も新聞を軸としたメディアリテラシー教育がここ20年来の研究テーマ。様々な情報を簡単に入手できる時代となったが、その手段は新聞・雑誌・ラジオ・テレビというマスメディアが主であった時代から、ウェブサイトやブログなどの新しいメディアからの情報入手へとスライドしている。

新しいメディアからの情報入手は自ら得たいものを簡便に検索でき、他サイトとの差異の比較もできうる。しかし、簡便さ故に「見たいものしか見なく」なり、「深く読み取ること」が減り、情報の真偽の確認や他の情報との比較を行わず、パッと目にした情報をすぐに受け入れがちとなる。いわゆる「鵜呑みにする」ことにつながる可能性が大きい。 情報を「鵜呑みにする」事は危険であり、悪質なデマや問題がある情報を「正しいもの」と思い込み、それをさらに他人に広めようとする危険性もある。

大切なことは、これらのメディアの情報特性を知り、その情報を処理する新しい「読み書きの力」を身につけることであろう。もたらされる情報をあえて批判的に受け止め、真偽を吟味しつつ読みこなす能力、ウェブサイトなどで発信する情報がもたらす影響を予測する能力、発信に起因するトラブルを回避する能力などがその力であろう。

現在の高校生はデジタルネイティブ世代である。あえて、新聞などのオールドメディア(失礼か?)を用いてじっくり読んで考える、複数紙の意見の違いを読み取らせるなどのトレーニングが必要なのかもしれない。テレビ・新聞などからの情報はSNS等と比較し、その信頼性の高さが『情報通信白書』にも示されている。多くの人たちの確認作業を経て、世の中に発信されている信頼性の高い学習材としての役割を活用したい。

キクチさんの思いも含め、これからを見据えた教育のあり方を探りたいと再認識した時間でした。ご寄贈いただいた本はまず私が読ませていただきました!

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