校長室より

令和3年度入学式 校長式辞

暖かな日和の中、校舎へと続く坂道にも春の香りが満ち溢れる今日この佳き日、59名の新入生を迎えることができますことは、本校の教職員並びに在校生にとって大きな喜びであります。

保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。高校での3年間は、人生の方向性を決定する上で大切な、また悩みや苦しみの多い時期でもあります。今後、お子様は遠く離れた地で生活をすることになりますが、これまで以上に安心できる親子関係づくりに努めていただき、そうした温かな家庭と時には厳しくもある学校とが緊密な連携を図り、お子様の成長をサポートしていきたいと考えます。私たち教職員は、お子様が自らの課題を自覚し、生きる道を切り開いていけるよう、全力で支援してまいります。保護者の皆様におかれましても、本校の教育方針を十分にご理解いただき、ご支援とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

只今入学を許可しました59名の新入生の皆さん、入学おめでとう。本校は今年創立66年目を迎えますが、地域の熱意で開校し昭和33年に「全国初の全日制分校」となった歴史を経て、現在離島では全国でも稀な全日制普通科校です。本校では、目指したい人材像を「グローカル人材」と定めています。グローバルセンスとローカルセンスの両方を持ち合わせ、広い視野で考えながら、足元から実践していける人材、ふるさとを思いながら、自分自身や地域の特性を活かして活躍できる人材、このグローカル人材を生徒、教職員がともに目指していきます。自身の主体的な決断によって、志を持って本校の門をたたいてくれた新入生の皆さんと在校生、教職員が力を合わせて、永遠に持続可能で魅力的な学校となるようともに努力していきましょう。

ここで、皆さんに本校の校歌と校訓について少しお話をしておきます。本校の校歌は、全国的にも珍しいとされる、生徒の作詞によるものです。昭和30年に隠岐高校分校定時制として開校した際の1期生の合作で昭和31年に制定され、昭和33年に全日制分校となり、昭和40年に島根県立隠岐島前高等学校として独立するという歴史の中で、制定当時のまま今も歌い継がれています。1番から3番まで「ああ美しきこの島に」と歌われ、他のどんな場所とも異なる、この島、この島前地域で学ぶことの喜びと誇りを感じさせます。随所に豊かな自然が表現され、大いなる自然に包み込まれつつ、常に「伸びよう」と互いに呼びかけ合う歌詞から脈々と感じられるのは、澄みきった若々しさとみなぎる決意です。そして、校訓の由来ともなった「真理・理想・進取」の3つの言葉です。実はこの校訓は、平成元年度に制定されており、つまり、後の校訓につながるこの校歌の歌詞には、生徒たちがその意気と活力で学校を築き上げ、そして創りあげてきた本校ならではの伝統の力を感じさせます。新入生のみなさんも、この校歌・校訓を胸に刻み、本校で学ぶことに喜びと誇りを持って充実した高校生活を送ってください。

次に、新入生の皆さんに、高校生活を送る上で大切にしてほしいことを、1つ伝えておきたいと思います。一般的に我々の人格は、概ね20年で完成すると言われます。20年前後で完成され、その後、多少の知恵は身に着けたとしてもその本質は変わりません。人格とは人柄、他者に対する思いやりや物事を謙虚に受け止められる資質は、豊かな人間関係を築くうえでの基盤となり、自分の可能性を大きく広げてくれます。高校の3年間が、皆さん一人ひとりの人格形成に大きな影響を与える大切な時期であることをまずしっかりと自覚をしてください。その上で、次の言葉を皆さんに紹介します。

「君は君 我は我也 されど仲よき」。武者小路実篤という小説家のこの言葉、中学生までとは異なる友人関係がスタートするこの時期に、その意味をしっかりと考えてみてください。「君は君 我は我也 されど仲よき」。そして、これからスタートする高校生活、この3年間は中学生までの友人関係から一皮脱皮し、お互いの個性や人格を尊重し合える、自立した友人関係を築いていってほしいと期待します。また、本校においては、同級生や先輩後輩の関わりの他にも、地域内外の大人や地元小中学生との交流など幅広い年齢層の人たちと関わる機会が多くあります。そういう方々との関係性を大切にし、まず自分から思いやりを持ち、その気持ちを具体的な言葉や行動に置き換えて実践していきましょう。1つの思いやりに満ちた言葉や行動は、次の思いやりのある言動につながり、その輪は確実に広がっていきます。他者に感謝をし、思いやりを持って接する、その上で、自立した1人の人間としての人格形成に努めてください。我々教職員も、皆さんにとってこの3年間が人生の基盤となる重要な時期であることを認識し、しっかりと支援していく覚悟です。

最後になりますが、皆さんが活力と熱意を持って高校生活を送られんことを祈念し、また学校と地域が一体となってしっかりと皆さんを支えていくことを約束し、式辞といたします。

令和3年4月9日
島根県立隠岐島前高等学校
校長 井筒 秀明

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