校長室より

「愛される人間になれ」故上田和孝先生碑より(第1学期終業式式辞)

1学期の終業式をむかえました。学校全体で大きな事故もなく無事に今日の日をむかえることができたことを何より喜びたいと思います。今年度に入ってもコロナ禍の影響が続き、本校においては、4月に臨時休業の対応を余儀なくされましたが、感染が生徒へ拡がらなかったことに救われました。

終業式をむかえ、生徒の皆さんはこの1学期をどのように振り返りますか。この3か月の間、君たち一人一人の身の回りには、日々様々な出来事があったことでしょう。気になりながらもその時には深く考えなかったことやその時には気にしていなかったけど、今、胸の奥に引っかかっていること、あるいは自覚さえしていなかったことの中に、君たちの今後に意味を持ってくる大切なことがあるかもしれません。この夏休み、家族や友人とリフレッシュできる時間を持ちながら、1学期を振り返ってみてください。具体的な出来事を思い返し、自分の言動を素直に、また、客観的に思い返すことができれば、その時の自分の行動が適切であったかどうかということに意識を巡らせることもできます。そういう振り返りは、君たちを確実に成長へと導いていきます。

この1学期、君たちの真摯な姿勢に触れる機会が多くありました。県高校総体における各部活動の健闘は既に報告をさせてもらったとおりです。授業においては、各学年やクラスの特徴もあり、落ち着いて前向きに取り組んでいる印象的な姿が随所に見られました。5月中旬、視聴覚教室を覗くと、1年生音楽選択生が校歌の試験を受けていました。一人ずつ順番に隣の準備室に入り、演奏に合わせて校歌を歌う。評価の観点は、歌詞を覚えていること、伝えたい想いを持っていること、その想いが相手にしっかりと伝わること。しばらくの間、一人一人の歌声に耳を傾けました。全校で校歌を歌う機会が持てない現状の中、入学して一月足らずの一年生がこんなにしっかりと校歌を歌ってくれている、とても嬉しい授業風景でした。6月中旬には、スクールカウンセラーの吉岡先生にご協力いただき、全学年において「心の教育」が行われました。2年生の「エゴグラム」では、いくつかの質問への回答から現れる自我、その傾向と特徴を生徒一人一人、理解することができていました。授業の最後に、担任・副担任からのコメントを頷きながら聞いている生徒の表情からは、教員の率直な想いが確実に伝わっていると感じられ、そんな場面に立ち会えて良かったと実感しました。5月下旬に誕生した新生徒会は、執行部とサポートメンバーが協力して精力的に活動を始めていますが、生徒の主体的で自立的な取り組みは、我々教職員にも大きな刺激を与えてくれています。立場こそ違え、何事にも当事者意識を持って取り組むことの大切さを教えられているように感じます。今後は、前期生徒会のメイン行事である碧燎祭にむけて、全校生徒一丸になった取り組みを期待します。

さて、話は変わりますが、「愛される人間になれ」という言葉、皆さん聞いたことがありますか、ありますね。レスリング場に向かう駐車場の入り口に建てられている石碑に刻まれた言葉です。

この石碑は、平成15年2月、本校卒業生で昭和55年から平成11年までの20年間、本校教員として勤められた故上田和孝先生の功績を讃え、座右の銘を後世に伝えるとともにレスリング部の活躍を願ってレスリング部OBと町民有志によって建てられたものです。上田先生は在学中にレスリング愛好会を立ち上げ、3年次には国民体育大会に出場されるなど本校レスリング部の生みの親として、教員になられてからもレスリング部の指導に心血を注がれた方です。私が初めて先生にお会いしたのは、大学4年次の教育実習でした。教員としての知識はもちろん、教育現場に立つ心構えさえ持ち合わせていなかった未熟な私を、大きく、また、優しく受け止め、接してくれました。その後、島根県の教員として一緒に勤めることができて数年後、体調を崩されている時期に七類港で偶然にお会いし、二言三言言葉を交わしたのが最後となってしまいました。人間的な魅力に溢れる方でしたから、未だに本校を訪れた方々が先生のことを懐かしく話題にされることもあります。生徒の皆さんに、いつかこのことを話しておきたいと思いながら3年目になりますが、この4月から皆さんの様子を見ていると、今なら上田先生が残した言葉、「愛される人間になれ」というこの言葉を受け止めてもらえる、そう感じて今日はお話をしています。親が自分の子どもに望むこと、幸せな人生を歩んでほしいというその親の願いに通じるこの言葉。私は、「教師であるならとことん生徒を愛する教師であれ」と先生から言われている、そう受け止めています。君たちにも、この言葉の意味をぜひ自分自身で考え、その結果として、一つでも実践できることを見つけてほしいと思います。

最後になりますが、新型コロナウイルス感染症について触れておきます。ワクチンの接種が少しずつ進み、校内においても希望する教職員や一部の生徒に対して既に接種を終えています。しかし、日程の都合がつかず、希望をしてもまだ接種を受けることができていない生徒も多くいる中、首都圏を中心に感染者は増加しています。この夏休みについても、今までの長期休業中と同様に、感染防止に努め、体調管理を徹底してください。

皆さんが充実した夏休みを過ごし、元気に2学期再会できることを期待して終業式の式辞とします。

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