校長室より

「堂々と勝ち 堂々と負けよ」(第3学期終業式式辞)

3学期の終業式をむかえました。コロナ禍の影響を受け、全国的にもまた、県内においても学校での感染が拡がっていますが、幸い隠岐地区での感染は限定的で本校に置いては臨時休業等の特別な措置を取ることなく3学期の学校活動が無事に終えられることに安堵しています。

今日で3学期は終わりになりますが、君たちはこの3学期をどのように振り返りますか。一つの節目となる年度替わりのこの時期に、少し落ち着いて客観的にこの3学期、そしてこの一年を振り返ってみてください。

2学期の終業式でも触れましたが、今、本校は学校魅力化の新たなステージに立とうとしています。そのことを実感するのは、君たちの主体的・協働的な取り組みが授業や生徒会活動などあらゆる場面で見受けられるようになってきているからです。4月、新年度を迎えれば、また、志を持った新入生が入学をしてきますが、新たなステージに立つ島前高校の2・3年生として新入生をしっかりと導いてください。

先般、卒業式前日のオンラインによる予餞会で、3年生へのメッセージとして「堂々と勝ち 堂々と負けよ」ということばを送りました。いきなり、勝ち負けの話で、「何のこと?」と思った人もいると思いますので、今日はそのことを少し解説させてもらいます。これは、ドイツの哲学者カールー・ダイムのことばでその一部を引用したものです。「威張らず、誇りを持って勝て 言い訳せず、品位を持って負けよ 堂々と勝ち 堂々と負けよ」。なぜこのことばかと言うと、レスリング部の大会の応援で、ある選手の試合を見ていると脳裏に浮かぶのがいつもこのことばだったからです。オリンピックでいろんな競技を観ていても、このことばを実践できていると思えるのは一握りのアスリートでしかなく、堂々と勝ち、堂々と負けることが簡単なことでないのはよくわかります。ましてや、高校生の部活動。高校から競技をはじめたこの選手にとって、試合前から技量の勝る相手であることが分かっていることも多くあったと思います。そういう状況にあっても、マットの中央に進み出る態度や、試合が終了しレフリーが勝者を宣告した後ベンチに下がるその姿は勝っても負けても堂々としている、その品位のある姿には伝わってくるものがありました。勝ち負けだけに一喜一憂しない、物事に向かっていく際の心のあり方、もっと言えば、人の生き方に関わる姿勢が伝わってきます。その姿には、弱音を吐かず、謙虚に誇りを持って生きることの尊さを感じます。

話は変わりますが、3月5日から海士町の協力によるシェアハウスの試行がはじまり、6名の1・2年生が既に町内の施設で共同生活をスタートしています。いずれの生徒も、地域のど真ん中に入り込んで生活をすることではじめて実感できる地域とのつながりや、そういう環境に自身を置くことによって得られる真の自立への足がかりを求めて手を上げてくれました。これから一人ひとりの挑戦が始まると思うと、期待感でワクワクします。一方、このシェアハウスの運用は、われわれ大人の側の探究でもあります。寮の収容数が限界にきている状況から発想を転換し、地域に根付いた島前高校ならではの強みを生かした挑戦です。今回、希望が叶わなかった生徒もいますが、今一度、このシェアハウス制度の目的の理解に努め、自身の日頃の生活を振り返ることによって成長の糧としてください。そして、今度こそはと思えるようになれば、ぜひ、またチャレンジしてください。

この春休み期間中、健康管理に努め、帰寮の際の留意事項等について十分に確認をし、不安なく新年度を迎えられるようにしてください。また、振り返りによる取り組みをしっかりと実践することにより、新年度、自覚をもった一人ひとりの表情をみせてもらえることを期待し、終業式の式辞とします。

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