教員・コーディネーター2026年3月21日 (土)
15日(日)、「老いも若きも島前高生!」地域の方に向けた特別授業を行いました
3月15日(日)、本校にて、地域の方々に向けた特別授業「老いも若きも島前高生!」を行いました。初の取り組みでしたが、地域の方々をはじめ、保護者、卒業生、小中学生、県外の先生や高校生など幅広い世代の方々45名あまりにお越しいただき、用意していた机が足りないほどに。老いも若きもいっしょに授業を受け、島前高生気分を満喫しました。

本企画は、島前高生が受けている授業を地域の方々にも体験してもらおうと、教員の発案で実現したもの。本校では、「失敗を共に称え合う学校」を目指し、生徒や教職員の挑戦(踏み込み)を後押しする「失敗共創プロジェクト」を推進してきました。今回の企画もその一環で、教員にとっては「いつもと違う幅広い年齢層の生徒たちに向けて授業を行う」という「踏み込み」の場でもあります。実際、授業が始まる前の職員室では、「めちゃくちゃ緊張してる」「ソワソワして落ち着かない…」「いつもの倍くらい、授業準備に時間をかけた」といった会話が交わされていました。
今回の企画は、「地域・社会にひらかれた学校」の進化形を目指す試みでもあります。本校では、島をまるごと学びのフィールドとし、生徒が地域に飛び出し、地域の方々といっしょに課題解決に取り組んできました。地域にひらかれた学校であると自負してきましたが……はたと振り返ると、地域の人が学校に来て学ぶ機会は、これまでなかった…ということに気づきました。学校をひらき、地域の方々にとっても学びの場となる。そんな新しい学校のあり方に挑戦することも、今回の実施目的の一つです。

当日は、朝9時すぎに、続々と「生徒たち」が登校。皆さん、やや緊張した様子です。まずは、「起立、礼、着席!」の号令に続いて、全員で「朝礼」を行いました。アイスブレイクのために、隣の人とペアになって話をする時間もあり、少し気持ちがほぐれたようです。

続いて、1時間目の授業へ。「公民」「理科」「情報」から1教科を選択し、授業を受けます。公民の授業を担当したのは、飯野卓先生。「校則を考える」をテーマに、本校の校則を見直し、新たな校則を考えていきました。まずは個人ワーク。実際の「生徒心得」を読み、気になる点を書き出します。次はグループワーク。3〜4人で現状の校則の課題や改善点について話し合い、具体的な提案にまとめていきます。最後はグループごとにプレゼンテーションを行い、全体で意見を共有しました。



今回の授業は、実際に生徒(島前高生)に向けて行った授業とほぼ同じもの。「生徒たちの関心事は制服や髪型・服装、スマホが中心だったが、今回は俯瞰した視点から本質的な意見が多数出ていて、とても興味深かった」と飯野先生。ここで出た意見は、後日、生徒にも紹介する予定だということです。

理科の授業を担当したのは、本企画の発案者でもある、吉岡裕司先生。「すごいぞ! 崎みかん!」(「崎みかん」は本校のある海士町で採れるみかん)をテーマに、みかんに含まれるビタミンCの量を調べる実験を行いました。すりつぶしたみかんにヨウ素液を加えていく実験に、“生徒”たちはときに真剣な表情で、ときに笑顔で取り組んでいました。



「皆さんが楽しそうに実験をしている姿を見てうれしかった」と吉岡先生。「同じ授業を島前高生にもやったが、今日はそのときよりもドキドキした。普段は(いつも相手にしている生徒だから)大丈夫だという安心感があったが、それは生徒に対する甘えなのかもしれない」と気づきもあったようです。

情報の授業を担当したのは、森田悟史先生。「3Dプリンタで印刷体験」をテーマに、3DCADソフトで3Dの物体を設計し、3Dプリンタで印刷するまでの一連のプロセスを体験しました。3Dプリンタを初めて目にする“生徒”も多く、興味津々の様子。パソコン操作に不慣れな“生徒”も、森田先生のサポートを受けながら、熱心に取り組む姿が見られました。



続く2時間目の授業は、「数学」「美術」「英語」から1教科を選択し、授業を受けます。数学を担当したのは、高村渉太先生。「確率を感じる、考える」をテーマに、じゃんけんや野球といった身近な例をもとに、「トーナメントとリーグのどちらが勝率が高いか」を検証していきました。確率とは何かという説明からスタートし、グループで実際にじゃんけんをしながら結果を検討。授業は大いに盛り上がり、大人生徒からは「数学ってこんなおもしろかったんだ!」という声も聞かれました。



小学生も多く参加したため、「わかりやすく説明することに加え、60分で完結する授業構成も難しかった」と高村先生。小学生たちは頭を悩ませながらも手を動かして考え、高村先生のねらい通り“確率を感じ”ていたようでした。

美術を担当したのは、三桐綾子先生。「コラージュで抽象絵画に挑戦しよう!」をテーマに、“生徒”たちはカラフルな色紙や布を使ったコラージュ作品作りに取り組みました。冒頭では色彩心理や造形心理について解説があり、それぞれが思い思いの色や形の素材を台紙に貼り付け、最後は作品に込めた想いを共有しました。



授業を終えたある“生徒”からは、「学生時代は出来栄えや優劣を気にしてしまって美術が好きじゃなかったけど、今日は自分が思うままに表現するのがすごく楽しかった」という感想が。満たされたような表情が印象的でした。

英語を担当したのは、藤原智美先生。「『ばけばけ』の世界を読んでみよう!」をテーマに、朝ドラで注目を集めている小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が英訳した日本の怪談「耳なし芳一」を英語で読んでいきました。冒頭では、生徒が一人ずつ英語で自己紹介を行い、小泉八雲に関するクイズにも挑戦しました。



「いろんな年代の人たちに向けて授業をするのは初めての体験で、とても緊張した」という藤原先生。「準備にも時間がかかり大変だったが、楽しかった」と笑顔で話してくれました。
最後には、再び全員が集まって「終礼」が行われました。昭和38年に本校を卒業したという男性は、「卒業以来、母校に足を運んだのは初めて。当時とは校舎の場所も違って、いろいろ変わってるけど懐かしい。授業もおもしろかった」と話してくれました。また、別の男性は、「高校時代には興味のなかった教科も、今なら興味がもてるかなと思って参加してみた。興味・関心の枠を超えて知ることの大切さをあらためて感じた」とのこと。現在は社会人として島外で働く本校の卒業生も、「いい機会だと思って来てみた。僕らのころより授業が探究っぽくなっていて、普段の授業も楽しそうだと思った」と感想を伝えてくれました。アンケートでも多く見られたのが、「教室でみんなで学ぶのが楽しかった」「また機会があれば参加したい」という声。生徒という立場になって学ぶ楽しさを体感した様子が伝わってきました。

授業後の職員室には、ホッとした表情の先生方が。「いやあ、無事に終わってよかった」「みんないい顔してたよね」「なんやかんやで、僕らも楽しかったよね」「次もまたやる!?」…そんな会話が交わされていました。

地域の方々に向けた特別授業「老いも若きも島前高生!」はこれにて終了。先生方、ナイス踏み込みでした! 後日行われた振り返りでは、「来年度もやりたい」「もっとたくさん地域の方を学校に呼びたい」「もっといろいろな先生に踏み込んでみてほしい」などの声があがりました。これからも隠岐島前高校は、失敗を恐れず挑戦し続ける「失敗を共に称え合う学校」を目指します!
(ライター:笹原風花)
