校長室より

「「禍を転じて福となす」的な出来事?」(令和5年度第1学期始業式式辞:書き起こし)

おはようございます。

春休み中に何人かの生徒さんとは校舎の内外でお会いしました。そういうときに「元気だったか?」と聞くと、「楽しかったです、春休み」と元気よい返答。「何をしてたの?」と聞くと、「こんなことしてました!」とか様々会話をさせてもらいました。集団になると、ついついお互いを気にするのかもしれませんが、今朝の挨拶の声が少し小さいことが、少しこの春一番のタイミングとしては心配ですが、明日にはまた新入生を迎えることになります。良き先輩として力強く、新入生たちに様々な手本であってほしいと思います。

加えて、先輩として自分がこの一年、もしくは二年間歩んできたことについて、自信を持って伝えられるような整理をしておいてほしいと思います。いい加減なアドバイスは、時と場合によって他人を迷わせる。自分が体験、経験してきたところから生じた思いであれば、それは必ず人に通じます。3学期の終業式で皆さんに、「新しい学年に進む前に、なぜ隠岐島前高校に進学したのか、それをもう一回きちんと思い起こして、この4月を迎えてください」とお願いしておきましたね。その思いも含め、よきアドバイスを期待します。

 

新2年生は、今年度からいよいよ地域共創科という新しい学科もスタートします。これまでの隠岐島前高校の歩み、特に魅力化については、始まって15年が経過しようとしています。その年に、新たな地域共創科はスタートします。さあ、地域共創科を選んだ2年生の皆さん、これまでの普通科といったい何が違うのか。何に力を入れて学んでいかなければいけないのか。これまでの夢探究とは探究の仕方が変わるのか、様々な思いを巡らせながら、再来週からの地域共創科独自の学びをスタートさせて欲しいと思います。

これまで隠岐島前高校が生徒の皆さんと地域の皆さんと、それから我々教職員と歩んできたこと、それをもう一段階グレードアップさせていくための今年度になります。ぜひとも皆で一緒にこの学校が更に一歩前に踏み込んでいけるよう、頑張っていきたいと思います。

 

さて、終業式では、私の18歳の失敗をお話しましたが、今日は、25年以上前の私の29歳の時の失敗の話をしたいと思います。「何事も準備が大切」と感じるとともに、自分の考え方や交流関係を変えるきっかけになったできごとです。29歳の時に初めて訪れた国がありました。今でも残っているパスポートにはその国の入国スタンプが20個近く、実は大変好きになり、ほぼ毎年行く国となりました。

その国に初めて行ったとき、最初は言葉も出来ないので、添乗員さんにお任せし、いわゆる名所ツアーのような旅でした。夏で気温が高く、涼もうということになって、添乗員さんが現地の喫茶店に連れて行ってくれました。当然、海外ですから、行けば現地語のメニューしかそこにはありません。困っているような表情だったのか、喫茶店の店員さんがニコニコ笑って寄ってこられて、日本語で「日本の方ですか?」と訊いてきました。「日本人ですよ」と答えると、「それならちょっと待ってください。日本語のメニューを持って来ますから」と言って、持ってきてくれました。その時は、「ああ親切だなあ、優しいなあ。日本人の観光客には優しいのかな」と感じました。当時は、スマホもないので、いろいろな写真をカメラ撮影していましたが、帰国後に写真を見てびっくり。実は日本語メニューに書かれてあった値段は、現地価格の3倍以上の値段だったのです。私が食べたのはかき氷で現地価格当時130円、それが日本語メニューになると約450円。こういう思いをしないためにも「少しは言葉を勉強しておけば、失敗したな~」と感じた瞬間でした。

 

さあこれ、皆さんだったらどうしますか?嫌な思い出で終わらせたくはないですね。私は何を考えたか。一年後に同じ喫茶店に行って、日本語メニューを差し出されたら「いりません」と言い、現地語メニューで注文しようと決意。そこで帰国後、9月から翌年6月まで週1回その国の言葉を習いました。多少のヒヤリングができるようになった翌夏、再度その国を訪れ、同じ喫茶店へ行きました。同じ店員さんはいませんでしたが、お店は健在でした。日本語のメニューをすっと持ってこられようとしたとき、私はその国の言葉でニコッとほほえみながら「いりませんよ」と伝えました。そうすると店員さんは私がかき氷を食べている間、横に座り、やさしい現地語で様々教えてくれました。きっかけは「悔しさ」であったかもしれませんが、ほんの少し言葉ができると、自分の世界は変わると私が実感した瞬間であるとともに、この出来事がその後に、私の宝となります。この国の多くの方と親交を深め、今でもやりとりが続くような関係性が構築できたのです。

 

ここで私が話したいのは、言葉が大事だということではありません。去年、私は学校のホームページにある思いを掲載しています。隠岐島前高校の学びにおいては、新しい「出会い」や「出来事」を得る機会は少なくないはず。そうした時、これまでになかった違和感を覚えた時こそ、より強い関心を持って、取り組んでみてほしい。自分の身の回りで起きること、様々な偶然というものをいかにキャッチして、自分の行動のプラスにつなげていくか、が実は大事だよ、ということです。様々な人との出会い、調べ学習を通じての様々な書籍や文献との出会いも体験したはずです。そのなかに、もしかしたら、あなたがたの人生を左右するような偶然(きっかけ)が転がっているかもしれません。

今年度も、皆さんは多くの活動をしていくと思いますが、どうかアンテナを高く立てて、自分の周りを飛び交っている偶然を今年一年しっかりキャッチできるように意識して欲しいと思います。

 

以上

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