校長室より

令和5年度入学式式辞

陽春の候

海の色も明るさを取り戻し、隠岐汽船のフェリーの汽笛も高らかに響きだしました。いよいよ春本番。今日のこのよき日に、来賓の皆様のご臨席を賜り、四年ぶりにほぼ従来の形での入学式を挙行できますこと、入学生はもとより、私たち教職員及び在校生にとって大きな喜びであります。皆様にご臨席いただきましたこと、まずもってお礼申し上げます。

 

保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。高校での三年間は、人生の方向性はもちろん、これからの世の中を生き抜く上での社会人力を身につける大切な時期ですが、同時に心の葛藤も多く悩み・苦しみの多い時期でもあります。遠く離れた地で生活をすることになるお子様も多くいらっしゃいますが、互いに安心できる親子関係づくりに努めていただきたく思います。私たち教職員は、お子様自身が自らの課題を自覚し、生きる道を切り開いていけるよう、全力で支援してまいります。保護者の皆様におかれましても、本校の教育方針を十分にご理解いただき、ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

 

さて、只今入学を許可しました54名の新入生の皆さん、入学おめでとう。本校は、地域の熱意で開校し、昭和30年に「全国初の全日制分校」となった歴史を経て、令和7年度には70周年を迎えることとなります。途中、存続の危機に直面した時期もありましたが、特に島前三町村の皆様方の協力の下乗り越え、現在では全国から注目される学校にまで成長することができ、本年度からは「地域共創科」という新たな学科も本格的に動き出します。

 

しかしながら、地域の過疎化や少子高齢化に伴う様々な課題に歯止めがかかったとはいえません。この隠岐島前高校も常に地域の一員として前進し続ける必要があります。自身の主体的な決断によって、志を持って本校の門をたたいてくれた新入生の皆さん。在校生、教職員とも力を合わせて、「夢を持ち、果敢に挑戦を続け、そして達成の際には笑顔あふれる」チーム隠岐島前高校、言い換えれば「永遠に持続可能で魅力的な学校」と進化していけるようにともに皆で努力していきましょう。

 

本校は昨年度からは「失敗を共に称え合う学校」を学校スローガンに据えました。これまで「踏み込み=挑戦」を大切にしてきた隠岐島前高校、しかし「踏み込み=挑戦」があれば、必ず「失敗」もあります。「失敗」体験を「失敗」のまま放っておくのではなく、しっかり振り返る(なぜ失敗したのか、何が足りなかったのかなど)、分析を行うことに力を入れ、新たな挑戦に一歩踏み出せる力強さを獲得してほしいと思います そのことをしっかりと意識し、ともに称え合う日とするためにも、同時に毎年10月13日を「失敗の日」に制定しました。生徒の皆さんだけでなく、教職員も決して失敗を恐れることなく、失敗さえも前向きにとらえ、その解決に向けて皆で協力し合えるチームであってほしいと考えます。

 

さて、最後に新入生の皆さんに一つお話ししておきたいことがあります。二〇世紀の半ばに若い人たちにブームとなったフランスの哲学者にサルトルという人物がいました。彼の考えの一つを紹介させていただきます。今、私が皆さんに「あなたたちは何のために生まれてきたのか」と問えば、どのような答えが返ってくるでしょうか? ~数秒無言~ その答えを待った後に私は「どのように」「どんな方法で」「世の中のためにはどのように貢献できますか」と私は問い返すと思います。

私の前にマイクがありますが、これは「音声を拾い、拡大して届けるため」に生まれてきたモノです。皆さんから見て、左側には時計がありますが、これは「私たちに時間を知らせるため」に生まれてきたモノです。ここでいいたいことは「モノは生まれる、言い換えれば作られる前に目的がすでにあるのです。」

再度、問います。「あなたたちは何のために生まれてきたのですか」 サルトルは「ヒトは目的を持って生まれてきていない。目的は自ら探し、自ら作り上げていかねばならない」と言っています。

さあ、皆さんこの隠岐島前高校での3年間で様々な体験をし、多くの人たちと出会い、そして時にはぶつかり合い・たたえ合いながら「自らの生きる目的」探しのために、夢を持ち、その実現に向けてチャレンジしてみませんか。

新入生のこれからの3年間が有意義な高校生活となることを祈念して、式辞を終えたいと思います。

 

 

令和五年 四月十一日 島根県立隠岐島前高等学校

校長 野津孝明

この記事をシェア